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「小さいおうち」を読んでみた [思うこと/日記]

そもそもは、新聞に紹介された書評を見たのだ。
「この本、おもしろそう」…。

小さいおうち

小さいおうち

  • 作者: 中島 京子
  • 出版社: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 単行本


私はよほどほしいと思わない限り、本は買わない。
だって、すぐに本棚があふれちゃうんだもん。
だから、地元図書館に蔵書検索をかけた。
…ない(-_-)

それで、一度は読むことをあきらめた。
でも、状況はほどなくして変わることになる。
私が「おもしろそう」と思ったこの本、直木賞にノミネート。
直木賞ノミニーなら、図書館だって買うでしょ?
そう思ったので再び蔵書検索。すると、3冊入荷されていた。
すかさず予約。予約順位は5位だったか6位だったか。
これならかなり早く回ってくるだろう♪

それからこの本は、めでたく直木賞を受賞。
書評を読んで感じた“おもしろそう”は間違ってなかったなぁ。
そして9月下旬、ついに貸し出しの順番が回ってきた。
職場のお昼休みを中心に、落ち着いて読み進めた。
以下、ごくごく個人的な感想を述べたいと思う。

この本は、女中奉公をしていたタキさんという女性の
回顧録を軸に構成されている。
私には窺い知れない時代背景なので、
最初は感情移入することもなく淡々と読んでいた。
ま、正直に言えば、なぜこの本が直木?と思うほど。

上の中?というか中の上?というかの平井家。
優しい旦那様と美しい奥様。
なんというかフィクションにありがちな設定なのかと思ったけど
この設定も決して無意味じゃないのよね。

途中で板倉さんという青年が登場して、
その後の展開はなんとなく予想できるんだけど
あくまでも匂わせるだけで、確定的な描写はなされない。
この部分が気になるのは、
私自身がそういう場所に足を踏み入れつつあるからなのか
それともそれは関係ないのか、わからない。

「直木というほどおもろいか?」
感情的な盛り上がりはないまま、ずーっと読んでいた。
しかし、最終章にたどり着いたときに、おや?と思った。
他の章は、枠囲みで章番号と章タイトルが書かれているだけなのに
最終章だけ、白紙の1ページが挟まれ、
きちんと挿絵入りのトビラが作られていたのだ。

振り返ってみれば、
目次の時点で最終章だけ使用フォントが違っている。
ここだけで気付いておきたかった…。
ともあれ、トビラをめくる前から
「この章だけはそれまでの章と違う」
という明確な告知を受けたかたちなので、
ちょっと身構えて読み始めた。

タキさんの甥の次男坊である健史の目線で
この最終章は綴られている。
そこまでの章で描写される健史というのは
いわゆるイマドキの大学生という感じなんだけど
この章の健史は、数年後とはいえ、まるで別人のような良い子ちゃんである。
(そこに若干の違和感を感じないこともない…)

もちろんネタバレをする気はないので
内容に関しては触れない方向ではあるのだが
「なぜ直木?」という疑問は、最終章を読んで全部ひっくり返った。
この最終章はすごく特別で
この章のために その前の章が存在したのだ。
この最終章を書くために、それまでの章があったんだろうなぁと私は思った。

タキさんの気持ち。
奥様の気持ち。板倉さんの気持ち。
そして、タキさんの気持ち。
最終章を最後まで読み、あらためて本の装丁を見ると
また違う思いが胸に湧き起こる。

日の目を見ることのない想い。
存在していたのかも不確かな想い。
本人すらも自覚できていなかったかも知れない想い。
奥様の気持ち。板倉さんの気持ち。
そして、タキさんの気持ち。

正解というか答えは、語られないまま物語は閉じるのだが
そこはこれを読んだ各人が感じればいいのだと思う。

戦争のことを横に置くとしても
時代背景が平成だったなら、成立し得ない話。
直木賞受賞に納得はしたんだけれど
どうしてか、読み返そうという意欲は湧かなかった。
なぜだろう?よくわからない。

因みに、同タイトルの有名な絵本、私は内容を知らない。
知っていてこの本を読むと、また何か違うんですかね?

いずれ映像化されそうな気がする。
連ドラよりは2,3時間のドラマか、映画が向いてるかな。
ともあれ、読んだ時間を返せ!って思う類の本ではない。
好きか嫌いかは、個人差がありそうだけどね。


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